相続税の申告手続きを自分で行うか専門家に依頼すべきか検討中の方向けに、自分で行う場合の申告方法や、税理士に依頼したほうが良いケースについて解説します。
目次
相続税申告は自分でもできる
結論から申し上げますと、相続税申告はご自身で行うことも可能です。
ご自身で相続税申告を行う1番のメリットは、費用を抑えられるという点です。
費用を抑えられるというメリットはありますが、相続税申告は遺産の種類やご自身の知識やスキル状況によってはかなり手間や時間がかかってしまう手続きとなりますので、遺産の種類や金額が複雑な場合やご自身の相続税に関する知識やスキルに不安がある場合は税理士に依頼することも検討しましょう。
相続税申告を税理士に依頼した方がよいケースとは
前章で相続税申告はご自身でも行うことは可能ですが、税理士に依頼することも検討しましょうと解説しましたが、具体的にどのようなケースの場合、税理士に依頼した方がよいのか解説します。
税理士に依頼した方がよいケースは下記のような場合です。
- 遺産総額が大きい
- 遺産に土地や株などの評価が難しい財産がある
- 特例適用や控除がある
- 忙しくて時間が取れない場合や相続税に関する知識に不安がある場合
遺産総額が大きい
遺産総額が5,000万円以下の場合は、税率や課税価格が低くなりますので、ご自身で相続税申告を行う際に生じる計算ミスによるペナルティも比較的少なくなります。
相続税は遺産総額が高くなるほど税率が高くなる累進課税制度です。
そのため、遺産総額が5,000万円を超える等大きい場合は、相続税の金額も高くなりますので、過少申告や過大申告のリスクを減らすためにも、相続財産が多い場合には税理士に依頼し、相続税の金額を最小限に抑えるためのアドバイスを受けましょう。
遺産に土地や株などの評価が難しい財産がある
土地や自社株などの評価は、専門的な知識と経験が必要な場合があります。
税理士に依頼すれば、適正な評価を受けることが可能です。
特例適用や控除がある
小規模宅地の特例や配偶者控除など、各種特例や控除がある場合も税理士に依頼することをおすすめします。
相続税には様々な特例や控除が用意されていますが、それぞれに適用要件があり、正しく理解しておく必要があります。
税理士に依頼することで、適切な特例や控除を適用して、後々の相続税の負担を軽減することが可能です。
忙しくて時間が取れない場合や相続税申告に関する知識に不安がある場合
相続税申告は、ご自身で行う場合、さまざまな書類を揃えたり、申告書を作成したりするなど、時間と手間がかかります。
税理士に依頼すれば、申告作業を丸投げすることが可能です。
相続税申告は期限がありますので、申告期限までに申告書を作成するのが難しい場合も税理士に依頼することで、期限内に申告を済ませることが可能です。
また、相続税申告は生涯何度もあるものではないので、相続に関する知識がない方がほとんどです。
申告になれていない人や知識がない方が申告を行うと、どうしても計算ミスや申告漏れなどが出てきてしまいます。
計算ミスや申告漏れに不安がある方も税理士に依頼するのがおすすめです。
自分で相続税申告する場合の留意点
ご自身で相続税申告する場合の留意点は大きく下記の3点ございます。
それぞれ詳しく解説します。
- 節税のアドバイスが受けられない
- 過大に申告してしまう・過少に申告して追徴課税を受けてしまうリスクがある
- 税務調査の確率が上がる
節税のアドバイスが受けられない
評価減や非課税、税額控除の特例
自分で申告する場合には、節税に関する適切なアドバイスを受けることができません。
相続税の負担を軽くする評価減(小規模宅地の特例など)や非課税、税額控除(相次相続控除など)の特例の適用を漏らしてしまったり、実際には使えない制度を適用して申告してしまい、税務調査により追徴課税を受けたりする可能性があります。
遺産分割によって変わる二次相続税
被相続人の配偶者が財産を取得した場合には「配偶者の税額軽減」によって税負担を抑えることができますが、同時に、将来配偶者に相続が発生した際の税負担(二次相続税)が増加することに繋がります。「1億6千万円までは税金がかからないから」と配偶者が遺産の大半を取得した結果、相続人が減少して税率の高くなる二次相続において多額の税負担が発生するケースがありますので注意してください。
過大に申告してしまう・過少に申告して追徴課税を受けてしまうリスクがある
自分で申告する場合、計算誤りによって過大に納税してしまうことや、逆に過少に申告した結果、税務調査・追徴課税が発生することなどが考えらえれます。
税務調査の確率が上がる
相続税の申告にあたっては、税務調査対策として事前に検討すべき点(過去のお金の流れや相続人の資産形成の経緯)などがあります。これらの検討が不十分な状態での申告は税務調査を招くことに繋がります。
相続税の申告手続きの流れ
相続人の確定
最初に、相続人を確定させます。被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を収集し、法定相続人を確認するとともに、遺言によって財産を取得する方がいないかを確認します。
相続財産の調査
次に、相続財産の調査を行います。不動産、預貯金、株式などの財産について、登記事項証明書・固定資産税課税明細/名寄帳、通帳・残高証明書・取引報告書などから相続財産を特定していきます。
また、通帳から過去や相続発生後の入出金をチェックすることで、被相続人に帰属する財産や債務を調査していくことも必要です。
口座間の入出金が多かったり、親族の口座への振込みが複数あったりする場合には、計上の方法について税理士に相談するとよいでしょう。
相続財産の評価
続いて、相続財産の評価額を算出します。財産評価基本通達をベースに、不動産は路線価、株式は取引価額などで評価されます。
不整形(きれいな四角形でない)の土地や傾斜のある土地、前面道路が狭い土地などは、特別の評価方法がありますので、評価額が大きく上下する可能性があります。
加えて、小規模宅地の評価減などの特例評価についても検討が必要ですので、こういったケースでは税理士へ相談することをお勧めします。
遺産分割協議
評価した相続財産について、どの相続人が何を取得するかを協議し、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割の内容によって相続税が大きく変わることも多いため、法定相続分に囚われずに様々なパターンを検証することが重要です。
相続税の経験豊富な税理士に依頼し、様々なシミュレーションを提示してもらうことも検討してください。
相続税申告書の作成・提出・納税
財産評価と遺産分割の内容を相続税申告書に記載し、税額を確定させます。
申告書様式は税務署や国税庁HPにて取得してください。なお相続税申告書は原則として全ての相続人が共同して提出します。
また、戸籍謄本や遺産分割協議書、マイナンバー情報などの必要添付書類を確認して、提出漏れの無いようにします。
納税は、税務署で納付書を入手し、金融機関にて手続きを行います。
相続税の申告を自分でする場合に準備する資料
相続関係に関する資料
相続人の確定にあたり、戸籍謄本や遺言書など相続関係を証明する資料が必要です。
財産評価に関する資料
不動産に関する資料
不動産の評価にあたっては、固定資産税課税明細/名寄帳(市役所)、登記事項証明書・公図(法務局)、路線価図(国税庁HP)などが必要です。
預貯金に関する資料
預貯金の計上にあたっては、残高証明書だけでなく通帳の入出金の確認や、定期預金の既経過利息の計算などが必要です。
申告・納税に関する資料
相続税の申告書様式や納税のための納付書が必要です。
まとめ:相続税申告についてご不安な点がありましたら、まずは税理士へご相談ください
相続税申告は自分で行うことも可能ですが、専門家のアドバイスを受けて節税対策をとった方が有利になるケースもあります。
自分で行うのに適しているケースは財産構成がシンプルで、規模があまり大きくない場合などです。
こういった場合にも、税務署からの連絡があれば、自分で対応する必要がありますし、計算ミスや税務調査のリスクも考慮する必要があります。
相続税申告について不安がある場合は、まず税理士に相談ください。