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亡くなった納税義務者の申告については10ヶ月延長される
相続税の申告が必要な人が、その申告期限前に、申告書を提出せずに死亡した場合、その申告義務・納税義務は、その死亡した人の相続人に引き継がれます。
その死亡した人が提出すべきだった相続税申告書に限り、申告期限はその死亡から10ヶ月間延長されます。
【具体例】父→母の順で相続が発生した場合
<前提>
父の死亡:×1年4月1日 母の死亡:×1年8月1日 |
父の相続税の申告期限
子A・子Bが父から相続した財産にかかる申告書:×2年2月1日(延長されない)
母が父から相続した財産にかかる申告書(子A・子Bが共同で提出):×2年6月1日(母の死亡から10ヶ月延長)
注意点
延長されるのは、あくまで亡くなった母が提出すべきだった申告書にかかる申告期限だけですので、子A・子Bが父から相続した財産がある場合には、その部分にかかる申告納税については、当初の期限まで(父の死亡から10ヶ月以内)に行う必要があることにご注意ください。
亡くなった納税義務者の申告書には付票の添付が必要
相続税の申告前に死亡した人の申告書を、その相続人が提出する場合には、申告書第1表の氏名・住所や課税価格・税額などは、その死亡した人の情報を記載したうえで、第1表の付表1「納税義務等の承継に係る明細書」を添付します。
付表には、その死亡した人が納付すべきだった相続税額について、その相続人がどのように承継するのか、相続人の代表者は誰か、相続人全員の住所・氏名・マイナンバーなどの個人情報について記載します。
ただし、相続人が1人の場合には、納税義務が分割されることがないため、この付表を記載する必要はなく、第1表の氏名住所欄に、死亡した人と相続人を2段書きすることとなります。
遺産分割前に死亡した場合には、その後の分割によって税額が大きく変わることも
遺産分割前に配偶者が死亡した場合(このようなケースを「数次相続」と呼びます)、直接子世代が相続したものとするか、配偶者が一度相続したうえで更に子世代が相続したものとするかで、最終的に取得した財産の金額が同じであっても、2回の相続でどのように課税財産を配分するか(税率の低いところを活用できるか)によって、大きく税負担が変わることもあります。
専門家へ早めに相談して、遺産分割のパターンに応じたシミュレーションを行ってから遺産分割協議書を作成することが望ましいでしょう。
また、祖父から父、父から子へと、相続が連続して発生した場合には、「相次相続控除」という特殊な計算が発生します。計算量や作成する書類の量が増えますので、専門家への相談をお勧めします。
まとめ
相続が続けて発生したようなケースでは、そもそも遺族の物理的・心理的な負担が非常に大きなものとなります。そのなかでも、相続税の申告期限は単純に一括延長されるようなものではなく、通常の期限通りに相続税の申告書を作成しなければいけないケースも多くあります。
このような場合、相続税申告にとりかかるタイミングが遅くなったり、相続財産の調査が困難になったりと、期限がタイトになると同時に、遺産分割が税額計算に与える影響も大きくなりがちです。
相続が複数回発生したことでお悩みの方は、税負担を最小に抑えるとともに、物理的・心理的な負担をも抑えるため、相続税を専門的に取り扱う税理士へご相談なさることをお勧めいたします。