相続税の申告を終えた後、新たな財産が見つかることは珍しくありません。
例えば、相続人が把握していなかった預金口座や不動産などが後から出てくるケースもあります。
このような場合、適切な手続きを取らなければ、延滞税、加算税などのペナルティが発生する可能性があります。
では、新たな財産が見つかったとき、どのような対応を取ればよいのでしょうか?
申告期限内と申告期限後で手続きが異なるため、それぞれの方法について詳しく解説します。
相続税申告の期限前であれば、「訂正申告」を行う
相続税の申告期限内(通常は相続開始から10か月以内)に新たな財産が見つかった場合は「訂正申告」を行うことができます。
訂正申告は、当初に提出した申告書の内容を修正する手続きです。
申告期限内の手続きであるため、特にペナルティはありません。
訂正申告の手順
訂正申告の手順は以下になります。
適切に訂正申告を行うことで、当初の申告内容を修正し、相続税申告の手続きを完了することができます。
- 新たに発見した財産の確認
- 訂正した申告書を作成
- 添付書類の準備
- 税務署への提出
- 相続税の納付
訂正申告の具体的な手順を解説します。
1.新たに発見した財産の確認
見つかった財産の種類、金額、評価額などを確認します。
財産の種類によっては、専門家による評価額の算定が必要になる場合があります。(不動産、骨董品、美術品など)
2.訂正した申告書を作成
新たな財産を含めた相続税額を再計算します。なお、訂正申告書という申告書はなく、当初の申告書と同じ「相続税の申告書」を使用します。
3.添付書類の準備
訂正後の申告書と一緒に新たな財産に関する資料を準備します。
預金口座が見つかった場合には残高証明書、不動産が見つかった場合には評価明細書やその他の書類など、新たに発見した財産の内容が分かる資料、評価に用いた資料を添付することが多いです。
4.税務署への提出
訂正後の申告書および添付書類を税務署に提出します。
なお、添付書類の提出は必須ではありませんが、提出しておくことで税務調査のリスクを減らすことができます。
提出方法は、税務署窓口に直接提出するほか、郵送やe-Taxによる電子申告も可能です。
5.相続税の納付
不足している相続税を追加で納めます。
申告期限内の手続きであるため、延滞税や加算税などのペナルティはありません。
相続税申告の期限後であれば修正申告を行う
相続税の申告期限後に新たな財産が見つかった場合は、「修正申告」を行う必要があります。
修正申告は、相続税申告の期限後に既に提出した申告書の内容を修正する手続きです。
新たな財産が見つかった場合、税務署の指摘を受ける前に自主的に修正申告を行うことが望ましいでしょう。
なぜなら、税務調査により申告漏れが発覚した場合には、過少申告加算税や場合によっては重加算税など、ペナルティが課される可能性があるためです。
修正申告の手順
修正申告の手順は以下になります。
申告内容に誤りがあった場合でも、速やかに修正申告を行うことで、延滞税や加算税などの余計な税負担を抑えることができます。
- 新たに発見した財産の確認
- 修正した申告書を作成
- 添付書類の準備
- 税務署への提出
- 相続税、延滞税の納付
修正申告の具体的な手順を解説します。
1.新たに発見した財産の確認
訂正申告の場合と同様、見つかった財産の種類、金額、評価額などを確認します。
財産の種類によっては、専門家による評価額の算定が必要になる場合があります。(不動産、骨董品、美術品など)
2.修正した申告書を作成
新たな財産を含めて相続税額を再計算します。
従来、修正申告をする場合には、通常の申告書とは異なる「相続税の修正申告書」の様式を使用していましたが、令和5年分以降は廃止されています。
現在は、当初の申告書と同じ「相続税の申告書」を使用します。
なお、令和4年分以前の申告について修正申告をする場合には、「相続税の修正申告書」の様式に必要事項を記載して作成します。
参考:ページ下部、相続税の修正申告書を参照。
3.添付書類の準備
修正した申告書と一緒に、新たな財産に関する資料を準備します。
預金口座が見つかった場合には残高証明書、不動産が見つかった場合には評価明細書やその他の書類など、新たに発見した財産の内容が分かる資料、評価に用いた資料を添付することが多いです。
4.税務署への提出
修正した申告書および添付書類を税務署に提出します。
訂正申告と同様、添付書類の提出は義務ではありませんが、申告し直した内容の根拠となりますので、提出することが望ましいでしょう。
5.相続税、延滞税の納付
不足している相続税および延滞税を納めます。
延滞税は、申告期限の翌日から相続税を完納する日までの日数に応じて計算されます。
なお、修正申告にかかる追加税額の納付期限は「修正申告をした日」となるため、申告書を提出する日までに納税を済ませる必要があります。
追加の納税が遅れると、修正申告をした日から納税までの期間に対して、更に延滞税がかかってしまうので注意が必要です。
また、税務調査の事前通知後に修正申告をした場合には、相続税、延滞税のほかに過少申告加算税が課されます。
修正申告で課される可能性のある税金
修正申告は申告期限後の手続きであるため、下記のペナルティが課される可能性があります。
- 延滞税
- 過少申告加算税
- 重加算税
具体的な内容や税率について、見ていきましょう。
・延滞税
利息に相当する税金であり、修正申告により追加で納めた税金に対して課されます。修正申告は申告期限後の手続きであるため、基本的には延滞税が課されることになります。
税率は金利に応じて毎年変更があり、令和7年は下記のとおりです。
①納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間:2.4%
②上記①以降の期間:8.7%
参考:延滞税の割合|国税庁
・過少申告加算税
申告した税額が実際の税額よりも少ない場合に課される税金です。
税務調査の事前通知前に自主的に修正申告をした場合には、過少申告加算税はかかりません。
修正申告をした場合の税率は下記のとおりです。
①税務調査の事前通知後、税務調査を受けるまでに修正申告をした場合:5%
②税務調査後に修正申告をした場合:10%
いずれも、当初の納税額を超える部分(当初の納税額が50万円以下の場合には、50万円を超える部分)には、更に5%が上乗せされます。
・重加算税
申告内容を仮装、隠蔽するなど、悪質性が高いと判断された場合に課される税金です。
具体的には、被相続人の財産を隠したり、故意に財産額を少なく申告する、などが該当します。
税率は下記のとおりです。
①期限内に申告があった場合:35%
②期限内に申告がなかった場合:40%
重加算税は罰則的な意味合いが強いため、税率も非常に高く設定されています。
まとめ
相続税申告後に新たな財産が見つかった場合は、速やかに再度申告することが好ましいです。
申告期限内であれば訂正申告となり、ペナルティ等はありません。
申告期限後であれば修正申告となるため、1日でも早く申告することで、延滞税や加算税などの余計な税負担を抑えることができます。
ただし、ご自身で焦って手続きを行ってしまうと、後から修正が必要になったり、追加の税負担が生じる可能性があるため、少しでも申告に不安がある場合には、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。